朝のホームルーム
キーンコーンカーンコーン。窓際の席で、三岡新入生(アベニーパファー)がスマホを見つめて固まっています。画面には「オンラインサロン 入会はこちら」の大きなボタン。ぶかぶかの袖から出た胸びれが、ぷるぷる震えています。
「入会する前に、何を確認すればいいんですか」
出席簿を持った村野教頭(エレファントノーズ)が、長い鼻でスマホの下のほうを指しました。「押す前に、画面の一番下までスクロールしなさい。答えは小さな文字の中にあります」
この小さな文字、読むのに5分もかかりません。今日の授業が終わると、入会ボタンの前で3秒だけ立ち止まれる人になれます。
授業:特商法の表示を3つに分けて読む
教頭が黒板に大きく書きました。「特定商取引法に基づく表示」。「長いので、学校では特商法の表示と呼びます」
三岡「ひぇっ、それ、月いくらからですか?」ぷくっ(ふくらみ1回)。教頭「お金はかかりません。募集ページの一番下にある、無料のリンクです」
消費者庁の特定商取引法ガイドによると、ネットなどで広告して申込みを受ける取引は「通信販売」です。お金を取って提供するサービスも対象で、同庁のQ&Aには、「有料の情報配信サービス」が有償で提供される契約なら規制対象になる、とあります(2026年10月23日確認)。サロンが当てはまるかは契約の中身しだいです。迷ったら消費生活センターに聞いてください。
そこへ、水槽の縁を軍服の金魚が横切りました。サロン見極め科のニッコリ先生(ランチュウ)です。「諸君、入学金は元が取れたか。この表示ページは、入る前に読めば元が取れるぞ。タダじゃからな」。胸の勲章を、尾びれでちょいと直しました。
表示ページは、パンの裏ラベル
教頭「たとえるなら、購買部のパンの裏ラベルです。原材料、賞味期限、作った会社。裏を見ずに買う生徒は、いませんね。表示ページは、サロンの裏ラベルです」
当てるものさしは3つ
教頭「裏ラベルを読むとき、私は3つのものさしを当てます」。1つ目は、書いてあるか。2つ目は、具体的か。3つ目は、ほかのページと合っているか。下の図のとおりです。

図のとおり、まず項目がそろっているかを見ます。次に「屋号だけ」のような薄い書き方でないかを見ます。最後に、募集ページや申込み画面の金額・条件と食い違っていないかを見ます。では、ものさしを当てる3つの表示を並べます。順番は大事さの順位ではありません。
表示1 誰がやっているか
見るもの:事業者の氏名(名称)、住所、電話番号。法人なら、代表者か担当責任者の氏名も。
決まり:消費者庁のQ&Aでは、通称や屋号、サイト名だけの表示は認められないとされています。住所は実際に活動している場所で、私書箱は「住所」の表示にならない、とも書かれています。請求されたら出す方式もありますが、その「遅滞なく」は、申込みを決める前に十分な余裕をもって、という意味です。
国民生活センターの発表にも、「オンラインサロンを解約したいが、住所や電話番号等がわからない」という相談例が載っています。出典:消費者庁「通信販売広告Q&A」、国民生活センター(2026年10月23日確認)。
表示2 いくら・いつ払うか
見るもの:価格(サービスの対価)、代金の支払時期と方法、サービスの提供時期。申込み期間の定めがあれば、その内容も。
決まり:これらは広告に表示する事項として、消費者庁のガイドに並んでいます。ほかに、送料以外の負担金や、継続契約の条件も対象です。月額なのか一括なのか、更新はあるのか。追加の費用が書かれていないか。ここで探します。
ニッコリ先生「入学金0円の学校ほど、体操服代を見落とすものじゃ」。三岡は袖で口を押さえました。出典:消費者庁「特定商取引法ガイド 通信販売」(2026年10月23日確認)。
表示3 やめるときどうなるか
見るもの:申込みの撤回や解除に関する事項。返品の特約があるなら、その内容。
決まり:消費者庁と国民生活センターは、通信販売にクーリング・オフ制度はないと説明しています。返品の「8日以内」という決まりは、消費者庁のQ&Aでは「商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から数えて8日以内」と説明されています。返品の特約は、返品の可否、期間、費用負担のどれも、広告で省略できません。商品の返品特約については、「その都度ご相談に応じます」という書き方は不十分とされています。サロンの解約欄で同じ書き方を見たら、立ち止まる目安にします(筆者の目安です)。
会員制サービスの解約は、まず表示された条件を読むのが出発点です。いつまでに、どこから、返金はあるのか。空欄なら、申込み前に運営へ質問しましょう。出典:消費者庁「通信販売広告Q&A」、国民生活センター「クーリング・オフ」(2026年10月23日確認)。
返品の条件の書き方は、別の解説記事でも詳しく書かれています。
ネット通販では、返品の条件を価格の近くなど見やすい場所に書き、注文の最終確認画面にも表示する必要があると解説しています。
参考:ネット通販の返品特約の表示と、年末前の確認
3つを並べると
3つの表示を1枚に並べると、下の図のようになります。右端の「立ち止まる例」は、屋号だけ・私書箱、金額の食い違い、「ご相談に応じます」だけ、の4つです。筆者の目安なので、迷ったら運営に質問しましょう。

三岡「全部そろっていたら、安心ですか」。教頭「うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい。ただ、においは表示に書いてありません。そろっているのは、スタート地点です。そのサロンで得をするかどうかは、表示からは分かりません」。三岡の頬が、ぷくっとふくらみました(ふくらみ2回)。
表示が読めて、ひっかかる点がなければ、次は運営への質問です。入会ボタンの前の手順は、下の図のとおりです。

契約の前に、金額と解約の条件を紙に書き出す習慣は、ほかの契約でも使えます。
代理店やフランチャイズの契約書は、金額・期間・解約条件や違約金、縛りの範囲を署名の前に確認するよう整理しています。
参考:代理店・フランチャイズ契約前の確認項目
小テスト
サロンの表示ページで、事業者名の欄に「サイト名だけ」が書いてありました。三岡はどうする?
A サイト名があれば十分なので、すぐ申し込む
B 運営している人や会社の名称が分かるまで、申込みを止めて運営に質問する
C 友達が入っているので、表示は見ない
答えはBです。消費者庁のQ&Aで、通称や屋号、サイト名だけの表示は認められないとされているからです。
今日の宿題
気になっているサロンや講座の募集ページを開いて、一番下の「特定商取引法に基づく表示」を探しましょう。見つかったら、事業者名と住所をメモ帳に写すだけ。申込みはしません。5分で終わります。
校長のひとこと
授業のあいだ、ずっと寝ていたシーラカンス校長が、ふいに片目を開けました。「……ラベルは、裏から読むものじゃ」。そのまま、すやすやと寝ました。
放課後・購買部
購買部のマネッコ先輩「へい、らっしゃい!今日のパンは仕入れ中でやんす。準備中ですので、少々お待ちを」
教頭の補習(希望者だけ) もっと突っ込んで知りたい人へ。ウハウハ高等学校には、月額1,000円の有料オンラインコミュニティがあります。最新情報の配信、チャットでの質問、会員同士の交流ができます。入りたい人だけ、入学案内をのぞいてください。コラムは、これからもずっと無料で読めます。
次回予告
次は、のれん分け科の教室です。法被のコバンザメ、マネッコ先輩が「看板を借りて商売する」話をします。契約書の読み方は、あちらでも大活躍。のれん分け科の教室へ
出典と確認日
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 通信販売」https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/(確認日:2026年10月23日)
- 消費者庁「通信販売広告Q&A」https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/advertising.html(確認日:2026年10月23日)
- 国民生活センター「クーリング・オフ」https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html(確認日:2026年10月23日)
- 国民生活センター「新たな“もうけ話トラブル”に注意-オンラインサロンで稼ぐ!?-」https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210701_1.html(確認日:2026年10月23日)
この記事は学習用の情報で、契約や投資の勧誘や助言ではありません。契約や投資の判断はご自身でお願いします。契約・法律の判断は、消費生活センターや弁護士などの専門家にも確認してください。先生や生徒の名前はフィクションで、実在の企業・団体・人物とは関係ありません。