この授業では、優越的地位の濫用を見分ける3つの条件がわかります。そして、おかしいと思ったときの動き方もつかめます。
朝のホームルーム
さて、教室に入ると、三岡新入生が教卓の下にもぐっていました。ぶかぶかのブレザーのすそだけが、はみ出しています。
「実は、先輩が言っていました。フランチャイズ本部には逆らえない、と。優越的地位とか、公取委とか、ひぇっ、それ、月いくらからですか?」
ぷくっ(ふくらみ1回)。すると、教卓ごと、ほんの少し持ち上がります。そこで出席簿を手にした村野教頭は、ため息をつきました。
本部の指示がすべて問題、というわけではありません。ただし、越えてはいけない線はあります。そこで今日は、その線の引き方を読みます。
優越的地位の濫用とは
3条件と指針の6つの例
2021年4月28日改正
1優越的地位の濫用の3条件
2指針が挙げる例のうち6つ(契約後の取引)
| 行為 | どんな場面 |
|---|---|
| 取引先の制限 | 本部の指定業者とだけ取引させる |
| 仕入数量の強制 | 必要な量を超えて仕入れを指示 |
| 見切り販売の制限 | 正当な理由なく値引きを制限する |
| 時短営業の協議拒絶 | 話し合いを拒み営業時間を押しつける |
| ドミナント出店 | 取決めに反し近くに出店する |
| 契約終了後の競業禁止 | 必要な範囲を超える地域・期間・内容 |
3コンビニ加盟店への調査(%)
公取委が2020年9月に公表。コンビニに限った調査です。
4おかしいと思ったら
- やり取りを書面やメールで残す
- 公取委の本局・各地方事務所に相談できる
- 契約の判断は弁護士など専門家へ
授業:優越的地位の濫用とフランチャイズ
そして教頭が黒板をたたきます。「うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい。しかし、線引きは、においでなく指針で確かめます。要点は3つです」
1. 優越的地位の濫用を見る、3つの条件
まず、公正取引委員会(公取委)の指針は、優越的地位の濫用を次のように説明します。つまり、立場が上の側が、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に相手へ不利益を与えること、です。
次に、フランチャイズの指針では、本部が優越した地位にあるのは、加盟者が本部との取引を続けられなくなると事業経営上大きな支障を来し、不利な要請でも受け入れざるを得ない場合とされています。では、下の図が、3つの条件です。

すると、法被姿のマネッコ先輩が、にやりと笑います。「へい、らっしゃい! コバンザメは大きな魚にくっついて暮らす身でやんす。ただ、くっついていれば何でも飲む、とは限らないでござんす」
また、優越しているかは、取引への依存度、市場での地位、取引先を変えられるか、といった事情を合わせて判断されます。なお、この考え方は、別の解説記事でも取り上げられています。
取適法の対象外の取引でも、立場の強い側が協賛金を負担させるなどして相手に不当な不利益を与えることは、独占禁止法の優越的地位の濫用として別に禁じられています。
参考:取適法で手形払いは禁止に。発注を受ける小さな会社が確認する3つ
2. 優越的地位の濫用で、指針が挙げる問題となり得る例
次に、公取委の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(2021年4月28日に最新の改正。2026年10月25日確認)は、契約後の取引について、いくつか例を挙げています(下の図はそのうち6つです)。

実は、各例には、「正当な理由がないのに」「必要な範囲を超えて」「返品が認められないのに」「事前の取決めがあるのに」といった条件が付いています。部活にたとえます。部長が練習メニューを決めるのは普通です。ただ、必要な量を超えるシューズの購入を命じ、返品も認めないなら話は別、という具合です。
すると、三岡の頭が、教卓の下からぴょこりと出ました。ぷくっ(ふくらみ2回)。「勝手に発注されることも、あるんですか」
また、指針は、加盟者の意思に反して、加盟者の名で仕入れを発注することも、仕入数量の強制の例に挙げています。
3. 優越的地位の濫用、実際の声とおかしいと思ったとき
次に、公取委が2020年9月に公表した、コンビニの本部と加盟店の実態調査があります。ただし、フランチャイズ全体の数字ではありません。指導員に無断で発注された経験が「ある」は44.6%。また、予想収益の説明より実際が悪かった、も41.1%でした。

なお、2021年の指針の改正で、加盟者の意思に反する発注や、時短営業の協議拒絶などの例が加わりました。
まず、おかしいと感じたら、本部とのやり取りを書面やメールで残してください。また、中小企業庁の資料によると、公取委は独占禁止法に関する相談や申告を、本局・各地方事務所で受け付けています。
ただし、個別の契約が問題かどうかは、弁護士などの専門家に確認してください。
小テスト|優越的地位の濫用の確認
たとえば、加盟店オーナーが、本部の指示が優越的地位の濫用にあたるかを考えます。見方として近いのは、どれでしょう。
- A 本部の指示は、すべて違法になる
- B 正当な理由があるか、必要な範囲を超えるかなど、条件つきで見る
- C 契約書に署名したので、何も問題にならない
答えはBです。なぜなら、指針の例は、「正当な理由がないのに」など条件つきで書かれています。
今日の宿題|優越的地位の濫用の指針を読む
まず、公取委のフランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方を開き、「3」の見出しだけ読んでみましょう。しかも5分で終わり、費用はかかりません。
校長のひとこと
そして、ずっと眠っていたシーラカンス校長が、片目だけ開けました。
「…立場の強い弱いは、潮の流れで入れ替わるものじゃ。わしは4億年、売ったことがない。契約は、読んでから泳ぐのじゃぞ。…ぐう」
フランチャイズでの独立・開業について、相談したい方はこちらです。(外部サイトへ移動します)
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放課後・購買部
購買部のマネッコ先輩「今日のパンは、ただいま焼き上げ中でやんす。準備中ですので、もうしばらくお待ちを」
教頭の補習(希望者だけ) もっと突っ込んで知りたい人へ。ウハウハ高等学校には、月額1,000円の有料オンラインコミュニティがあります。最新情報の配信、チャットでの質問、会員同士の交流ができます。入りたい人だけ、入学案内をのぞいてください。コラムは、これからもずっと無料で読めます。
次回予告
次は、校舎の入口にある入学試験の教室へ。校長が、寝ぼけたまま試験官をつとめます。入学試験(ハブ)はこちらです。
出典と確認日
- 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」:https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/franchise.html
- 公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」:https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/yuetsutekichii.html
- 公正取引委員会「フランチャイズ・ガイドラインの改正の概要」:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/apr/kitori/06sankouzentai.pdf
- 中小企業庁「フランチャイズ事業を始めるにあたって」(第9章「フランチャイズ契約を締結する前にチェックすべきポイント」):https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2021/download/r3fy-FC-all.pdf
- 確認日:2026年10月25日
この記事は学習用の情報で、契約や投資の勧誘や助言ではありません。契約や投資の判断はご自身でお願いします。先生や生徒の名前はフィクションで、実在の企業・団体・人物とは関係ありません。
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