朝のホームルーム
三岡新入生が、電卓を抱えて教室の扉に挟まりかけました。ぶかぶかのブレザーが引っかかっています。
「教頭先生、ニュースで見ました。中小企業の優遇税制がなくなるかもしれないって。ぼくが将来フランチャイズで開業したら、税金が増えるんですか?」
ぷくっ(ふくらみ1回)。
村野教頭は出席簿を閉じました。「落ち着いて。決まった話ではありません。ただ、開業の資金計画に、優遇税制をどう入れるかは大事な問いです」
資金計画に税の優遇を「当たり前の収入」のように書き込むと、制度が変わった年に計画がずれます。優遇税制とフランチャイズ開業の関係を、3つの確認で整理します。
中小企業の優遇税制が見直しへ
開業の資金計画で見る3点
財務大臣の会見
1税率の差を仮に計算(法人)
800万円
4%
2数字で見る
3資金計画の確認順
4計画の立て方
- 優遇ありとなしの両方
- 期限と条件を確認
- 優遇は続くと決めつける
- 全部なくなると決めつける
授業:優遇税制の見直しと開業の資金計画
まず、ニュースの確認です。財務省の会見概要によると、片山財務大臣は2026年10月9日の閣議後会見で、租税特別措置(特定の人や事業の税負担を軽くする特例)について「政策効果が低いものは廃止すべき」と述べました。政府税制調査会も活用し、ゼロベース(白紙の状態)で見直す方針です。
ここで押さえます。この会見は見直しの方針を述べたもので、どの制度をどうするかの結論ではありません。「中小企業向けの特例が全部なくなる」とは、会見の概要に書かれていません。
中小企業庁は2026年9月1日の資料で、賃上げ促進税制、法人税率の軽減、経営強化税制、投資促進税制の4つについて、効果を点検しています。マネッコ先輩が法被を直して、手を挙げました。「へい、らっしゃい! 開業する側が見るのは、制度の名前より『自分の計画のどこに入っているか』でやんす」
1つ目:軽減税率は「法人」の話
中小企業の法人税には、軽減があります。中小企業庁の案内では、年800万円以下の所得の部分は15%です(本則は19%)。800万円を超える部分は23.2%です。対象は、2027年3月31日までに始まる事業年度です。
この制度は2024年度に約111万件で使われたと、中小企業庁の資料にあります。経済産業省は2026年8月の要望で「政策効果を高める観点から見直しを行った上で延長する」としています。延長の年数や見直しの中身は、その要望に書かれていません。
三岡が聞きます。「じゃあ、もし15%が19%に戻ったら?」
「予想ではなく、計画の点検です」と教頭。「たとえば、法人で年800万円の所得が出た場合、4%の差は800万円×4%で32万円です。住民税や事業税は別です。所得が出ない期は、この差も出ません」
これは法人税の話です。個人事業で開業する場合の税は別の仕組みです。個人か法人かの選び方は、別の回で整理しました。
個人事業と法人のどちらで開業するかを、公庫と国税庁の資料で比べて整理した回です。
参考:開業は個人事業と法人どっち?公庫と国税庁で見る違い
2つ目:設備の特例は「期限と条件」を見る
フランチャイズ店では、機器や備品を買う場面が多くあります。国税庁によると、青色申告をする中小企業者等は、2026年4月1日以後に取得した取得価額40万円未満の資産を、取得した年に全額経費にできる特例があります。改正前は30万円未満でした。年間の合計は300万円までで、適用期間は2029年3月31日までです。従業員数は400人以下が条件です。
この特例は、中小企業庁が点検した4つの制度には入っていません。それでも、条件と期限がある制度です。見積書の金額が40万円未満かどうかで、経費の処理が変わります。
少額の資産を経費にできる基準が40万円未満に広がった点を、パソコンの購入を例に説明した解説です。
参考:35万円のパソコンを買ったら全額経費になるかを説明した、少額資産のルール解説
3つ目:本部の収支モデルの「前提」を聞く
本部の収支モデルに税引き後の数字があるときは、優遇税制を使う前提かどうかを聞きます。加盟前の確認項目は次のとおりです。
- 収支モデルは、税引き前か、税引き後か
- 税の計算に、軽減税率や設備の特例を使っているか
- 特例がなくなった場合の数字を、見せてもらえるか
契約前の確認項目は、別の解説記事でも整理されています。
代理店やフランチャイズの契約前に、手数料・期間・解約など確認する項目を整理した解説です。
参考:代理店・フランチャイズ契約前の確認項目(手数料・期間・解約)
税の扱いや、自分の事業での適用は、税理士に確認してください。ここは細かいので、国税庁と中小企業庁の公式サイトも見てください。
小テスト
開業の資金計画に、中小企業の優遇税制を入れるとき、いちばん適切な考え方はどれでしょう。
- A 制度は続くはずなので、優遇ありの数字だけで計画する
- B 優遇ありとなしの両方で、手元に残るお金を見ておく
- C 制度が不安なので、税のことは考えずに開業する
答えはBです。見直しの方針は出ましたが、結論は出ていません。両方の数字を見ておけば、どちらに転んでも計画を直せます。
宿題
5分でできます。国税庁のサイトで「少額減価償却資産」を開き、40万円未満という数字と、適用期間の終わりの日付をメモします。税の優遇は「いつまで」「誰が」使えるかを見ます。
校長のひとこと
シーラカンス校長は、32万円の計算のあたりで寝ていました。ブレザーのそでを引っ張られて、片目を開けます。
「わしは4億年、売ったことがない。税の特例も、あてにしたことがない」
そう言って、また寝ました。
出典と確認日
- 財務省「片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要」(2026年10月9日)
- 中小企業庁「中小企業税制の効果について」(2026年9月1日)、同「法人税率の軽減」
- 経済産業省2027年度税制改正に関する経済産業省要望(2026年8月)
- 国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
- KMP(この話題の入口として参照)
確認日:2026年10月27日。この日時点の情報です。最新の情報は公式サイトで確認してください。
この記事は学習用の情報で、契約や投資の勧誘や助言ではありません。契約や投資の判断はご自身でお願いします。先生や生徒の名前はフィクションで、実在の企業・団体・人物とは関係ありません。
この学科の記事を読む順に並べたページは、のれん分け科のまとめ|記事の一覧と読む順番です。
この記事が気に入ったら、シェアしてください
