この授業では、株主還元の3つの形がわかります。また、3つのものさしで、3社の例を並べて読みます。
朝のホームルーム|株主還元の疑問
三岡新入生は、チラシを3枚ひれにはさみ、斜めになって教室に入ってきました。「配当」「自社株買い」「株主優待」。しかも、どれも「株主にお返しします」と書いてあります。

「でも、教頭先生、全部ちがうものに見えます。株主還元って、結局なにを返してくれるんですか?」
村野教頭は出席をとりながら、チラシを1枚ずつ机に並べました。「三岡くん、今日の軸は『会社がお金を返す3つの形』です」

たとえばお店のポイントも、現金で戻る、次回のクーポンで戻る、と形がちがいます。そして、形が見分けられると、会社の発表がぐっと読みやすくなります。
株主還元は3つの形
配当・自社株買い・優待
事実だけ紹介
1返し方で3つに分ける
23つのものさしで読む
| 配当 | 自社株買い | 株主優待 | |
|---|---|---|---|
| ① 誰に届く | 保有株数に応じて年2回 | 市場で株を売った人 | 基準日の株主名簿の株主 |
| ② 何で返す | お金 | お金と株数の変化 | 体験(パスポート) |
| ③ 約束の強さ | 目標を文章で公表 | 期間と上限の単発 | 通常は制度として公表 |
例:日本取引所グループ(配当)、いよぎんホールディングス(自社株買い)、オリエンタルランド(優待)
3配当性向の目標(%)
日本取引所グループが2015年度に引き上げ。
4数字で見る
授業:株主還元、会社がお金を返す3つの形
村野教頭「今日は紹介の授業です。つまり、どれかをすすめる授業ではありませんし、順位もつけません。まず、軸を決めて、ものさしを3つ用意して、会社を3社並べます」
軸 株主還元は「返し方」で3つに分けて見る
株主還元とは、会社が稼いだ利益を、株主(会社の持ち主のひとり)へ返すことです。たとえば、日本取引所グループも、自社の方針に「株主の皆様への利益還元」と書いています(2026年10月25日確認)。
たとえば文化祭の売り上げを、出資してくれた仲間へ返す場面を想像してください。まず、封筒に現金を入れて配る。次に、出資者のひとりから出資分を買い取って、仲間の数を減らす。さらに、屋台のチケットを贈る。つまり、これが、配当、自社株買い、株主優待にあたります。

株主優待について、日本取引所グループの用語集は、配当とは別に自社製品やサービスを無料でプレゼントする制度だと説明しています。さらに、諸外国ではほとんど行われておらず、日本企業独特の施策とも書いています。
株式から得られる収益の形は、別の解説記事でも比較されています。ただ、蓄電池投資と比べる形の記事ですが、株式の部分が整理されています。
株式投資は、企業の一部を有価証券として保有し、株価の値上がり益や配当などから収益を得ます。株主は基本的に経営に関与しません。
参考:株式・投資信託の収益の源泉を、ほかの投資と比べた解説
ただし、株主が日々の経営に関与しないといっても、株主総会で議決権を使って、会社の大事なことの決定に加わる権利はあります。
株主還元を並べて比べる、3つのものさし
そこで、3社を同じ型で読むために、ものさしを3つ決めます。①誰に届くか。②何で返すか。③約束の強さ。つまり、会社が方針として決めているのか、今回かぎりなのか、という見方です。

三岡「ひぇっ、それ、月いくらからですか?」
村野教頭「月額ではありません。つまり、ものさしの話です」
三岡はぷくっ(ふくらみ1回)。チラシが1枚、ひらひらと床に落ちました。
株主還元の3社を同じ型で読む
なお、並べる順番は、返し方の説明の順です。優劣でも順位でもありません。そのため、各社の公開資料から、事実だけを書きます。
日本取引所グループ|配当
- 返し方:配当。業績に応じた配当を基本とすると、方針に書かれています。
- 事実:配当性向(利益のうち配当に回す割合)を60%以上とすることを目標にしています。さらに、2015年度に、目標を40%程度から60%程度へ引き上げました。
- ものさし:①保有する株式数に応じて、年に2回の配当。②お金。③方針として目標を文章で公表。
- 出典:同社「株主還元」「株主になると」のページ。
バンカラ姿のハイギョ、井松仙人が高下駄を鳴らして割り込みます。「実は、わしは配当の話が好物でのう。霞を食って、配当で暮らすのじゃ」

村野教頭「しかし、仙人、好物の話ではなく、今日は事実の話です。並べているだけですので」
いよぎんホールディングス|自社株買い
- 返し方:自社株買い。会社が自分の株を、東京証券取引所で買い戻します。
- 事実:2026年8月7日に取締役会で決定しました。具体的には、取得するのは上限600万株、取得価額は上限150億円、取得期間は2026年8月10日から10月16日です。また、理由は「資本効率を高めることを通じて企業価値の向上を図るため」とされています。
- ものさし:①市場で株を売った人にお金が渡る。②お金と、会社の株の数の変化。③期間と上限を決めた、単発の決定。
- 出典:同社「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」。
ただ、「上限」と書かれているので、実際に買う額は、これ以下になることもあります。なお、期間はすでに終わっていますが、実際にいくら買ったかは、会社の続報で確認が必要です。
オリエンタルランド|株主優待
- 返し方:株主優待。「東京ディズニーランド」または「東京ディズニーシー」どちらかのパークで使える1デーパスポートです。
- 事実:割当基準日は9月末日と3月末日の年2回。通常の優待は500株以上が対象で、基準日の所有株式数に応じて、パスポートの枚数が決まります。ただし、購入は権利付き最終日(基準日の2営業日前)までに済ませる必要があります。
- ものさし:①基準日に株主名簿へ載る株主。②体験(パスポート)。③通常の優待は制度として公表。別に、上場30周年の記念で今回限りの特別優待も案内(対象は2026年9月30日の基準日の株主で、基準日はすでに過ぎています)。
- 出典:同社「株主優待制度」のページ。
すると、三岡はパスポートの話に身を乗り出して、ぷくっぷくっ(ふくらみ2回)。村野教頭「優待は、会社が決める制度です。内容は会社ごとに違い、変わることもあります。だから、ここも事実の確認が先です」
村野教頭「確かに、『無料でもらえる』と聞くと、心が動きます。うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい」

株主還元は組み合わせて使う会社が多い
ただし、1社が、1つの形だけを使うとは限りません。たとえば、日本取引所グループは、配当のほかに、自己株式の取得も実施しています。同社の「株主還元」ページには、2026年6月1日から7月7日までの取得で、取得総額は200億円と載っています。
また、配当も自社株買いも優待も、会社の業績や判断で変わります。さらに、株価が下がって元本割れする可能性もあります。なお、税金がかかる場合の細かい点は、公式サイトや税理士などの専門家にも確認してください。
小テスト|株主還元の確認
会社が市場で自社株買いをしたとき、お金を受け取るのは、次のうち誰でしょう。まず、ものさしの「①誰に届くか」で考えてください。
- A 株を持ち続けている全員に、自動で配られる
- B 市場で、自分の株を売った人
- C 株主総会に出席した人
答えはBです。なぜなら、自社株買いは、会社が市場で株を買う取引なので、お金は株を売った人に渡るからです。
今日の宿題
まず、知っている会社を1つ選び、公式サイトの「株主還元」や「IR」のページを開いてください。そして、配当、自社株買い、優待のどれが書いてあるか、〇をつけるだけです。もちろん、買う必要はありません。5分で終わります。
校長のひとこと
シーラカンス校長は、チラシの枚数を数えているうちに寝ていました。最後に、片目だけ開けます。
「…返し方は、三つ。…受け取る側の、ものさしも、三つ。…わしは4億年、売ったことがない。…ぐう」
放課後・購買部
購買部のマネッコ先輩「へい、らっしゃい!今日のパンは仕入れ中でやんす。準備中ですので、ちょいとお待ちを」
教頭の補習(希望者だけ) もっと突っ込んで知りたい人へ。ウハウハ高等学校には、月額1,000円の有料オンラインコミュニティがあります。最新情報の配信、チャットでの質問、会員同士の交流ができます。入りたい人だけ、入学案内をのぞいてください。コラムは、これからもずっと無料で読めます。
次回予告
次回は、ピラルク留学科の教室へ。そして、セーラー服のスタモル留学生が、ドル建ての川を案内します。ピラルク留学科の教室へ進む
日本取引所グループ(JPX)は、上場会社の開示情報や市場のルールを公式サイトで公表しています。
合わせて読みたい
出典と確認日
- 日本取引所グループ「株主還元」:https://www.jpx.co.jp/corporate/investor-relations/shareholders/basic-policy/index.html
- 日本取引所グループ「株主になると」:https://www.jpx.co.jp/corporate/investor-relations/individual/shareholder/index.html
- 日本取引所グループ「用語集 株主優待」:https://www.jpx.co.jp/glossary/ka/543.html
- 日本取引所グループ「用語集 配当性向」:https://www.jpx.co.jp/glossary/ha/353.html
- 株式会社いよぎんホールディングス「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」(2026年8月7日):https://www2.jpx.co.jp/disc/58300/140120260806511530.pdf
- 株式会社オリエンタルランド「株主優待制度」:https://www.olc.co.jp/ja/ir/benefit.html
確認日:2026年10月25日
この記事は学習用の情報で、投資の勧誘や助言ではありません。投資の判断はご自身でお願いします。先生や生徒の名前はフィクションです。本文で紹介した会社は実在し、各社の公開資料にもとづく事例の紹介であり、売買をすすめるものではありません。
この学科の記事を読む順に並べたページは、配当ハイギョの沼のまとめ|記事の一覧と読む順番です。
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