朝のホームルーム|英語の決算をAIで読んでみたい
三岡新入生が、辞書を背負って教室に入ってきました。机に広げたタブレットには、英語がびっしり並んだ画面が映っています。
「アメリカの会社の決算を読んでみたいんです。でも、全部英語で……AIに訳してもらえば、いけますか? ぷくっ(ふくらみ1回)」
村野教頭が出席簿を閉じます。「この授業の検索語は『米国株 決算 AI 英語 読む』ですね。学校に聞いてもらえれば、なんでも答えます。三岡さんの疑問は、3つです」
- 英語の決算資料は、どこにあるのか
- AIに訳させて、大丈夫なのか
- 数字は、どこを確かめるのか
たとえば、表に「12,345」とあって、見出しに「In millions」と書かれていたとします。これは12,345ドルではなく、12,345百万ドルです。訳を読んでも、この一語を落とすと、桁が百万倍ずれます。
英語の決算をAIで読む
原文はSEC EDGARで探す
下書き
1主に出会う3つの書類
| 書類 | 内容 | 出す時期 |
|---|---|---|
| 10-K | 年次報告書 | 年に1回 |
| 10-Q | 第1〜第3四半期の報告書 | 四半期末から40日か45日以内 |
| 8-K | 出来事ごとの報告書 | 原則 出来事から4営業日以内 |
2百万単位を実際の金額に
12,345
(In millions)
3照合の4手順
4ずれやすい小さな語
- In millions(百万単位)
- except … per share(1株の数字は別)
- Three Months Ended(対象の3か月)
5覚えておく
授業:英語の決算をAIで読む3つの要点
教頭が黒板に「原文」と大きく書きました。スタモル留学生が、セーラー服のスカーフを直して言います。「ワタシの川では、ぜんぶドル建てデス。でも、読む順番は、世界共通デス」

要点1:原文は、SEC EDGARで探す
米国の上場会社は、米国証券取引委員会(SEC)に書類を出します。SECの「EDGAR」は、上場会社などが提出した書類を、無料で見られる公開データベースです(2026年10月25日確認)。
決算を読むときに出会う書類は、主に3つです。

図のとおり、10-Kは年に1回の年次報告書、10-Qは第1〜第3四半期の報告書、8-Kは出来事ごとの報告書です。SECの書式では、10-Qは第4四半期には出さず、四半期末から40日または45日以内(会社の区分で違う)に出します。8-Kは、原則として出来事から4営業日以内です。
SECの投資家向け資料によると、10-Kには事業の内容、リスク、経営陣による業績の説明、財務諸表が決まった順番で載っています。「Business」の項目は、会社を知る出発点として勧められています。なお、SECは10-Kを書かず、正確さを保証もしません。
決算を公表した会社は、8-Kの「Item 2.02」で報告します。SECの書式には、この項目で提供した情報は「filed(提出)」とはみなされない、とあります。決算発表の本文は、添付資料(Exhibit)として付きます。
要点2:英語の数字で、ずれやすい4か所
教頭「AIが訳すのは文章です。ずれやすいのは、数字の周りの小さな語です」

図の4つを、表の見出しで確かめます。たとえば、Meta Platformsが2026年10月21日に出した決算発表の表には、「In millions, except percentages and per share amounts」という見出しがあります。つまり、金額は百万単位で、1株あたりの数字だけは別、という意味です。また、対象は2026年9月30日までの3か月です(Three Months Ended)。
三岡「ひぇっ、それ、月いくらからですか?」

教頭「月額ではなく、百万単位の話です。換算の式を見ましょう」


図の式のとおり、百万単位の数字に100万をかければ、実際の金額です。たとえば、12,345なら、12,345百万ドル、つまり約123億4,500万ドルです。数字は例です。三岡は、ぷくっ(ふくらみ2回)。
要点3:AIには「引用」を出させて、原文で照合する
教頭「AIの訳と要約は『下書き』です。手順は4つです」

図の順に進めます。AIには、訳した文と一緒に、元の英語の語句も引用させます。そのうえで、数字と単位を原文の表で見比べます。食い違ったら、原文を採用します。
うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい。ただ、翻訳の間違いは、においません。だからこそ、人が目で確かめます。
MetaのパーソナルAIエージェントMuseは、2026年10月23日から日本でも使えるようになりました。便利な道具ですが、決算の数字は、道具が答えたあとに、原文で照らします。
うちの学校の運営でも、AIが出した数字は、元のシートの行で裏を取ってから使います。運営者のひとつの例です。
小テスト
問題。英語の決算の表で、見出しに「In millions」とあり、売上が「500」と書かれています。たとえばの数字です。実際の金額は、どれでしょう。
- A 500ドル
- B 500百万ドル(5億ドル)
- C AIが訳した数字だから、見出しは見なくてよい
答えはBです。In millionsは、百万単位の表示です。Cのように、見出しを見ないのは危ない読み方です。
今日の宿題
SECの「Search Filings」のページ(https://www.sec.gov/search-filings)を開き、会社名の検索欄に、知っている米国の会社の名前を入れてみましょう。そして、書類の種類の欄で、10-Kを探します。5分で終わります。
校長のひとこと
シーラカンス校長は、4つ目の手順のあたりから寝ていました。鐘が鳴って、目をうっすら開けます。
「……訳は、橋じゃ。渡ったら、対岸の景色は、自分の目で見るのじゃ……ぐう。わからないことは、学校に聞いてね。コメントや各SNSで待っておるぞ」
放課後・購買部
購買部のマネッコ先輩「へい、らっしゃい! 今日のパンは、英和辞典の隣で準備中でやんす。もうしばらくお待ちを」
教頭の補習(希望者だけ) もっと突っ込んで知りたい人へ。ウハウハ高等学校には、月額1,000円の有料オンラインコミュニティがあります。最新情報の配信、チャットでの質問、会員同士の交流ができます。入りたい人だけ、入学案内をのぞいてください。コラムは、これからもずっと無料で読めます。
次回予告
次回は、ニュース耳より科へ遠足です。和大先生が、AIの要約と、元の資料の「ずれ」を見つける目を鍛えてくれます。三岡は、虫めがねを持って出発しました。
一次情報はSEC投資家教育部「Investor Bulletinでも確認できます。
合わせて読みたい
出典と確認日
- SEC「Search Filings」:https://www.sec.gov/search-filings
- SEC投資家教育部「Investor Bulletin: How to Read a 10-K」:https://www.sec.gov/files/reada10k.pdf
- SEC「Form 8-K」:https://www.sec.gov/files/form8-k.pdf
- SEC「Form 10-Q」:https://www.sec.gov/files/form10-q.pdf
- Meta Platforms「Meta Reports Third Quarter 2026 Results」(8-Kの添付Exhibit 99.1、2026年10月21日):https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1326801/000162828026066700/meta-09302026xexhibit991.htm
- Meta「Meta、パーソナルAIエージェント「Muse」を日本で提供開始」(2026年10月23日):https://about.fb.com/ja/news/2026/10/muse-personal-ai-agent-launches-in-japan/
確認日:2026年10月25日
この記事は学習用の情報で、投資の勧誘や助言ではありません。投資の判断はご自身でお願いします。先生や生徒の名前はフィクションで、実在の企業・団体・人物とは関係ありません。
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