朝のホームルーム
キーンコーンカーンコーン。校庭に、大きな箱がずらりと並びました。三岡新入生が目を丸くします。「あれ、体育倉庫ですか?」
村野教頭が出席をとります。「いいえ。系統用蓄電池(送電網につないで、電気をためたり出したりする大型の電池)です。今日のテーマです」
ヘルメットのムコブカ主任が胸を張ります。「放電は得意、貯めるのは苦手。安全確認、ヨシ!」教頭「主任は貯められないので、貯める係は箱です」
スマホの電池が切れそうな夕方、モバイルバッテリーを探した経験はありませんか。あの「ためておく安心」を、町ぜんたいでやる話です。意外と身近でしょう。
授業:系統用蓄電池のしくみ
教頭が校庭の大きな水そうを指します。「雨の日に水をため、日照りの日に流します。系統用蓄電池は、電気でそれをやります」

図の順番です。電気が余ったら、ためる。足りなくなったら、出す。それだけです。
要点1:電気は「使う量=つくる量」でないと困る
電気は、使う量と発電する量を、いつもぴったり合わせる必要があります。崩れると周波数(電気の波のリズム)が乱れ、停電のおそれが出ます。
太陽光や風力は天気で増減します。発電が多すぎる日は、発電を抑える「出力制御」が行われることもあります(資源エネルギー庁)。三岡「もったいない……」。ぷくっ(ふくらみ1回)。
要点2:置き場所は3種類
蓄電池は、置き場所で3つに分かれます。電力系統に直接つなぐ「系統用」、太陽光や風力の発電所に併設する「再エネ併設」、家庭やビル・工場の側に置く「需要家側」です(資源エネルギー庁)。

系統用は、広い敷地にコンテナ型の設備を複数置くのが一般的です。家庭の蓄電池とは、目的も規模も違います。この違いは、別の解説記事でも詳しく書かれています。
家庭用は電気代の削減や停電対策が目的で、系統用は電力市場を通じて収益を狙う事業用の設備。規模も、つなぐ先も、関わる人も違うと整理しています。
参考:家庭用と系統用の蓄電池の違いを整理した解説
要点3:市場で「調整力」として使われる
調整力とは、一般送配電事業者(送配電会社)が需給のバランスを保つために必要とする能力のことです(電力広域的運営推進機関)。系統用蓄電池は、卸電力市場、需給調整市場、容量市場、相対契約などを通じて、この調整力などを出す設備として想定されています(環境共創イニシアチブの公募資料)。
三岡「ひぇっ、それ、月いくらからですか?」教頭「収益の金額は、市場の価格や制度で変わります。ここでは書きません」
市場ごとの稼ぎ方は、この記事でも整理されています。
卸電力市場は価格差、需給調整市場は調整力への対価、容量市場は供給力を備えることへの対価、と三つの市場を分けて説明しています。
参考:蓄電池の三つの市場と収益の仕組みの解説
用語の落とし穴も1つ。kW(瞬間の力)と、kWh(ためられる量)は別物です。蓄電池の説明には、両方が出てきます。

図の例は、1kWで2時間なら2kWhという、仮の計算です。
安全の話も、先に
経済産業省は、大型の蓄電池や蓄電所には大規模な火災や爆発につながる潜在的なリスクがあるため、安全確保が不可欠と書いています。2025年11月20日からは、容量20kWh超の電力貯蔵装置の事故も、報告の対象になりました。三岡は、ぷくっ(ふくらみ2回)。
教頭「『買うだけで毎月ラクに収入』と聞こえたら、においます。うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい」
蓄電池・太陽光の事業化について、事業者に相談したい方はこちらです。(外部サイトへ移動します)
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小テスト
問題:系統用蓄電池のおもな役割は、どれ?
- A 電気が余ったときにためて、足りないときに出す
- B 学校の電気代を0円にする
- C 校庭の水そうの水を増やす
答えはAです。BとCは、三岡が2回ふくらむ選択肢でした。
今日の宿題
家の電化製品を1つ選び、側面や裏のラベルにある消費電力(W)をスマホで撮って、メモしてください。今日の授業の「kW」の、いちばん身近な入口です。
校長のひとこと
ここまでぐっすり寝ていたシーラカンス校長が、うっすら目を開けました。「……ためるだけでは、ただの箱じゃ。出してこそ、役に立つ」
また寝ました。
放課後・購買部
購買部のマネッコ先輩「へい、らっしゃい!今日のパンは仕入れ中でやんす。準備中ですので、焼きたての香りだけでもどうぞ」
教頭の補習(希望者だけ) もっと突っ込んで知りたい人へ。ウハウハ高等学校には、月額1,000円の有料オンラインコミュニティがあります。最新情報の配信、チャットでの質問、会員同士の交流ができます。入りたい人だけ、入学案内をのぞいてください。コラムは、これからもずっと無料で読めます。
次回予告
次回はサロン見極め科へ。軍服のニッコリ先生の胸に、勲章が1個ふえているそうです。三岡は「会費」という言葉に、早くもそわそわしています。
出典と確認日
- 資源エネルギー庁「エネこれ」蓄電池の記事(2026年10月8日公開):知っているようで知らない「蓄電池」
- 資源エネルギー庁「エネこれ」電力系統用蓄電池の記事(2018年2月27日公開):再エネの安定化に役立つ「電力系統用蓄電池」
- 電力広域的運営推進機関「需給調整市場の検討・詳細設計」:需給調整市場のページ
- 環境共創イニシアチブ(SII)系統用蓄電システム等導入支援事業の公募情報:公募情報のページ
- 経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」:手引きのページ
- 確認日:2026年10月23日
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