朝のホームルーム
キーンコーンカーンコーン。積ん読科の教室に、三岡新入生がかけ込んできました。ぶかぶかのブレザーの袖から、スマホがのぞいています。画面は、数字だらけの白い表です。
「気になる会社の決算書です。ぜんぜん読めません。ぷくっ(ふくらみ1回)」
村野教頭が出席簿を開きます。「三岡くん、出席。今日の検索語は『決算書 初心者 読む順』ですね。本の力を借りましょう」
ここで一言。たとえばランチが900円で、材料費が300円なら、お店に残るのは600円です。決算書は、この引き算を会社まるごとでやった書類。引き算ができれば、入口には立てます。
授業:決算書の本は「読む順」で選ぶ
教壇に立った村野教頭が、黒板に大きく書きました。「今日の軸は『読む順』です。順位ではありません。階段の段差を見て、一段ずつ上がります」
ホズミ先生(ポリプテルス)が、白衣のポケットから丸メガネを出しました。「ふむ。積んだ本は、わしより古いのう。じゃが今日の4冊は、いちばん古くても2010年。わしよりずっと若いわい」
決算書の3枚を、屋台で見る
教頭「決算書は、文化祭の焼きそば屋台の帳簿だと思ってください」
売上が5万円、材料費が3万円なら、もうけは2万円です(たとえばの数字です)。これが損益計算書(1年間の売上と費用から、もうけを出す表)。下の図のとおり、引き算ひとつで読めます。

では、麺が10袋余っていたら。買った代金は払ったのに、まだ売っていません。余った麺、手元の現金、借りたお金を並べた表が貸借対照表(ある日の持ち物検査)です。そして、実際に財布へ入った・出ていったお金だけを追う表が、キャッシュ・フロー計算書。この3枚をあわせて「財務3表」と呼びます。
三岡「麺は余っているのに、お金は減っているんですね」。教頭「そこに気づけば合格です」。三岡は胸を張って、ぷくっとふくらみました(ふくらみ2回。こちらは、うれしいほうです)。
「売れ残りの麺は、帳簿の上では持ち物(資産)になる」という話は、別の解説記事でも詳しく書かれています。
仕入れた代金は売れた分だけが経費になり、売れ残りは資産として次の期に持ち越す、というルールを説明しています。
参考:仕入れた商品は「売れるまで」経費にならない。売れ残り在庫のホントのルール
「もうけは出ているのに、お金が減る」というズレの話は、こちらも参考になります。
仕入れの代金は先に出ていくため、売上が立っても現金が減ることがある、という時間差を、在庫の数字で見る手順を紹介しています。
参考:売上は立つのに現金が減る会社へ。在庫を週の営業件数に割る4つの手順と3つの数字
並べて比べるものさしは3つ
教頭「本を並べるときのものさしは、3つです」
1つ目は入口。版元(出版社)の紹介が、会計をまったく知らない人向けになっているか。2つ目は形式。イラスト、クイズ、新書、ミステリのどれで読むか。3つ目はゴール。基本で終わるのか、粉飾(数字をよく見せかけること)の兆候や投資指標まで進むのか。下の図に、3つをカードにしました。

三岡「ひぇっ、それ、月いくらからですか?」。ホズミ先生「本代の話ではない。読む量じゃ。月1冊のペースでも、4か月で階段の上に着くわい」。三岡はバタバタと手を動かして、メモを取りました。
4冊を、読む順に並べる
ここから先は、順位ではなく読む順番です。1歩目の本がいちばん良い、という意味ではありません。比べやすいように、4冊とも同じ型で書きます。
1歩目:『カラー版 会計のことが面白いほどわかる本〈会計の基本の基本編〉』
- 著者・出版社・刊行:天野敦之/KADOKAWA/2012年(紙版)
- 版元の紹介:「会計をまったく知らない人のための会計の本です。」と書かれています。イラストと対話形式で、複式簿記から財務諸表の読み方までを扱います(A5判304ページ)。
- 出典:KADOKAWA公式ページ(2026年10月23日確認)
2歩目:『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』(改訂版)
- 著者・出版社・刊行:大手町のランダムウォーカー/KADOKAWA/初版は2020年、改訂版は2026年2月
- 版元の紹介:クイズと会話形式で、数字に隠された企業のビジネス戦略を読み解く会計入門書です(改訂版は240ページ)。
- 出典:KADOKAWA公式ページ(2026年10月23日確認)
3歩目:『決算書はここだけ読め!』
- 著者・出版社・刊行:前川修満/講談社(講談社現代新書)/2010年
- 版元の紹介:会計の知識は5つの要素を押さえれば足りるとして、決算書の読み方を解説する入門書です。目次には「細部まで読む必要のない貸借対照表」「損益計算書で大切な5つの項目」が並びます。続きにあたる『キャッシュ・フロー計算書編』(2010年)もあります。
- 出典:講談社公式ページ(2026年10月23日確認)
4歩目:『会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪』
- 著者・出版社・刊行:白井敬祐/KADOKAWA/2026年1月
- 版元の紹介:マンガ、会話、クイズ形式の会計ミステリと解説の4ステップで、財務三表の基本、粉飾の兆候の見分け方、投資指標の読み方を学べる会計入門書です(272ページ)。
- 出典:KADOKAWA公式ページ(2026年10月23日確認)
粉飾と聞いて、三岡が青ざめました。教頭「うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい。ですが4歩目は、そのにおいを数字で確かめる練習です」
下の表に並べると、形式と入口の違いがひと目で分かります。

4冊そろえる必要はありません。まずは入口が自分に合う1冊から始めて、止まったら1歩前に戻れば大丈夫です。投資の判断に使うときは、本の内容だけでなく、会社が公表している資料も合わせて確かめてください。
小テスト
決算書の本を選ぶとき、最初に確かめるものさしはどれでしょう。
A. 表紙の色 B. 版元の紹介が、自分の知識に合った入口になっているか C. 書名の文字数
答えはBです。入口が合えば、最後まで読み切れるからです。AとCは、三岡が3回ふくらむ選択肢でした。
今日の宿題
今月の給料明細を開いて、手取りから「使ったお金」を引き、残った額を1行メモします。手取り-使ったお金=残ったお金。5分でできる、あなたの家計の損益計算書です。
校長のひとこと
授業のあいだずっと寝ていたシーラカンス校長が、ぱちりと片目を開けました。
「……階段はのう、のぼる順番さえ守れば、だれも転ばんもんじゃ」
また寝ました。
放課後・購買部
購買部のマネッコ先輩「へい、らっしゃい!今日のパンは仕入れ中でやんす。準備中ですので、少々お待ちを」
教頭の補習(希望者だけ) もっと突っ込んで知りたい人へ。ウハウハ高等学校には、月額1,000円の有料オンラインコミュニティがあります。最新情報の配信、チャットでの質問、会員同士の交流ができます。入りたい人だけ、入学案内をのぞいてください。コラムは、これからもずっと無料で読めます。
次回予告
三岡が次に向かうのは、バンカラ姿の井松仙人が待つ配当ハイギョの沼です。沼の底では、ハイギョが今日も気持ちよさそうに眠っているそうです。
出典と確認日
- KADOKAWA『カラー版 会計のことが面白いほどわかる本〈会計の基本の基本編〉』:https://www.kadokawa.co.jp/product/321603000164/
- KADOKAWA『【改訂版】会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』:https://www.kadokawa.co.jp/product/322503001448/
- KADOKAWA『世界一楽しい決算書の読み方[実践編]』発売のお知らせ(初版が2020年刊行との記載):https://www.kadokawa.co.jp/topics/7952/
- 講談社『決算書はここだけ読め!』:https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000210522
- 講談社『決算書はここだけ読め! キャッシュ・フロー計算書編』(著者名・続編の記載):https://www.kodansha.co.jp/titles/1000008382
- KADOKAWA『会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪』:https://www.kadokawa.co.jp/product/322503000265/
- 確認日:2026年10月23日
この記事は学習用の情報で、投資の勧誘や助言ではありません。投資の判断はご自身でお願いします。先生や生徒の名前はフィクションで、実在の企業・団体・人物とは関係ありません。