朝のホームルーム
キーンコーンカーンコーン。新社会人の三岡新入生が、給与明細の紙をにぎりしめて教室に飛び込んできました。
「教頭、給与明細の見方が分かりません! 額面より、振り込まれたお金がずっと少ないんです」ぷくっ(ふくらみ1回)。
村野教頭が出席簿を開きます。「点呼をとります。今日は、額面から引かれる5つが出席です」
手取りが分かると、毎月の積立にまわせる額も見えてきます。給料日の前に、5分だけ確認しましょう。
授業:給与明細の5つの引かれもの
村野教頭が、黒板に大きく書きました。「手取り=額面-引かれるもの」。
額面は総支給額、つまり会社が払う給料の全額です。手取りは、口座に振り込まれる額です。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の講義資料では、総支給額から社会保険料と税金を引いたものが手取り収入と説明されています(2026年10月23日確認)。

上の図のとおり、資料の例では、額面27万円から社会保険料4.1万円と税金1.4万円を引いて、手取りは21.5万円です。あなたの数字とは違います。あくまで例です。
額面は、5つの関所を通るたびに少しずつ軽くなります。関所は、社会保険料が3つ、税金が2つです。今日の軸は「手取りになるまでに引かれるもの」ひとつだけ。並べて比べるものさしを、教頭は3つ用意しました。

ものさしは、何のための支払いか、会社と折半か、数字は何で決まるか、の3つです。5つの関所を、この順に見ていきます。
健康保険
病気やケガに備える保険です。勤め先が協会けんぽ(全国健康保険協会)なら、保険料は会社と半分ずつ負担します。料率は都道府県ごとに違い、東京都は2026年度で9.85%です。2026年4月分(5月納付分)から、子ども・子育て支援金(0.23%)も加わりました(全国健康保険協会、2026年10月23日確認)。40歳になると介護保険料(1.62%)も加わりますが、いまの明細には出ません。
厚生年金
将来の年金のための保険料です。保険料率は18.3%で固定され、会社と本人が半分ずつ負担します。標準報酬月額(保険料を計算するための給料の区分)に率を掛けて決まります。たとえば標準報酬月額が22万円なら、本人の負担は月20,130円です(日本年金機構の2026年度の保険料額表、2026年10月23日確認)。
「20,130円!」ぷくっ(ふくらみ2回)。三岡が目を丸くします。「ひぇっ、それ、月いくらからですか?」
「『から』ではありません」と教頭。「給料の区分に率を掛けるので、額面が変われば変わります」
雇用保険
失業したときや育休のときの給付に備える保険です。2026年度の一般の事業では、本人の負担が0.5%、会社の負担が0.85%です。会社のほうが多いのは、会社だけが払う分も含まれるからです。料率は年度ごとに決まり、2026年4月に変わりました(厚生労働省、2026年10月23日確認)。
所得税
国に納める税金です。税率は5%から45%の7段階で、課税される所得が多いほど高くなります。毎月の給与から先に引かれ(源泉徴収)、年の最後に勤め先が精算します(年末調整)。会社と折半ではなく、全額が本人の税金です(国税庁、2026年10月23日確認)。
住民税
住んでいる地域に納める税金です。所得割の税率は10%(道府県4%、市町村6%)で、前の年の所得をもとに計算します。給与からは6月から翌年5月まで、毎月引かれます(総務省、東京都主税局、2026年10月23日確認)。
つまり、前の年に収入がほとんどなかった新社会人は、1年目の明細にまだ出ないことが多いのです。引かれ始めるのは、2年目の6月ごろからです。細かい条件は自治体で違うので、気になる人は勤め先の人事に確認してください。
「うちの明細に住民税の行がないの、事件だと思って経理に聞くところでした」と三岡。ぷくっ(ふくらみ3回)。教頭が、こほんと咳払いをしました。「来年の6月ごろに、ちゃんと来ます。楽しみにしなくていいですよ」
5つを一覧にすると、下の図のとおりです。社会保険料の3つは会社と負担を分け、税金の2つは本人が納めます。

三岡が手を挙げます。「5つとも、引かれなくなる方法はないんですか」
「うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい」と教頭。「『引かれない裏ワザ』と聞こえたら、まず人事に確認です。税金の細かい扱いは、税理士や人事に聞いてください」
手取りを知ったあとの進め方は、別の解説記事でも詳しく書かれています。
運用を始める前に、手取りの収入と支出をつかみ、先に貯める仕組みをつくる手順が、7つの段階で整理されています。
参考:資産運用を始める前の準備の手順を整理
小テスト
問題:次のうち、保険料を会社と半分ずつ負担するのはどれ? A 所得税 B 厚生年金 C 住民税
答えはBです。厚生年金は、会社と本人が半分ずつ負担します。所得税と住民税は、本人が納める税金です。三岡は「Aです!」と叫んで、すぐに手を引っ込めました。
今日の宿題
先月の給与明細を開いて、健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税の金額を、メモ帳に1行ずつ書き写してみましょう。5分で終わります。お金も口座開設もいりません。
校長のひとこと
ここまで寝ていたシーラカンス校長が、ふいに目を開きました。「……手取りを知らん者に、積立の額は決められんのう」また寝ました。
放課後・購買部
購買部のマネッコ先輩「へい、らっしゃい!今日のパンは仕入れ中でやんす。準備中ですので、少々お待ちを」
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次回予告
次に三岡が向かうのは、積ん読科の教室です。本の山が、そろそろ崩れます。三岡は山の下敷きにならずに済むのでしょうか。
出典と確認日
確認日:2026年10月23日
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「生活設計・家計管理」講義資料
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「2026年度の保険料率」
- 全国健康保険協会 広島支部「保険料率のご案内」(労使折半の記載)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「保険料額表(2026年度版)」
- 厚生労働省「雇用保険料率(2026年度)」
- 厚生労働省 栃木労働局「雇用保険料率のご案内」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 国税庁「給与所得者と税」
- 総務省「個人住民税」
- 東京都主税局「個人住民税の特別徴収」
この記事は学習用の情報で、投資の勧誘や助言ではありません。投資の判断はご自身でお願いします。先生や生徒の名前はフィクションで、実在の企業・団体・人物とは関係ありません。