朝のホームルーム
三岡新入生が、給食のトレーを持ったまま立ち尽くしていました。ご飯は少なめ。おかずは山盛りです。
「教頭先生、ニュースで『家計の現預金比率が下がった』と見ました。現預金比率って、ご飯が減ったということですか?」ぷくっ(ふくらみ1回)。
村野教頭は出席簿から顔を上げました。「三岡くん、出席。ご飯の量は、実は減っていません。割合が変わっただけです」

2026年10月26日に、家計の現預金比率の低下と、公募投資信託の純資産総額361兆円が報じられました。数字が大きすぎて実感がわきません。そこで3つの用語で読み方を整理します。たとえば貯金30万円と投資信託10万円を持つ人なら、現預金の割合は75%です。ニュースの数字は、この計算の特大版だと思ってください。
家計の現預金は44.6%に
投信361兆円、数字の読み方
6月末・9月末



1家計の金融資産の内訳(2026年6月末・兆円)
金融資産の合計は2,519兆円。現金・預金は前年同月末より0.5%増えています。
2現預金比率の変化
39月の公募投信の純資産
−3.1兆円
+2.4兆円
−5.5兆円
4数字を見たら確かめる3点
5ニュースの数字を読む順番
授業:現預金比率と純資産総額を読む3つの用語
教頭は黒板にお弁当箱を描きました。ご飯が現預金、おかずが株式や投資信託です。
用語1 現預金比率(弁当箱のご飯の割合)
現預金比率とは、家計の金融資産のうち、現金・預金が占める割合です。日本銀行の「資金循環統計」(お金の流れを部門ごとにまとめた統計)の速報で、2026年6月末の個人の金融資産は2,519兆円でした。時事通信が、9月17日の発表として報じています。
内訳を見ます。現金・預金は1,132兆円で、前年同月末より0.5%増えました。株式等は486兆円で47.0%増、投資信託は193兆円で36.8%増です。金融資産の全体は11.0%増でした。
BUSINESS INSIDER JAPANに載った、みずほ銀行の唐鎌大輔氏の寄稿(2026年10月21日)は、同じ統計から円の現預金比率を示しています。2022年12月末は53.7%、2026年6月末は44.6%。9.1ポイント下がり、過去最低を更新したという説明です。
ここが大事です。現金・預金は減っていません。ご飯の量は同じなのに、おかずが増えて、弁当箱の中のご飯の割合が下がった形です。三岡の目がまんまるになりました。「ひぇっ、それ、月いくらからですか?」「ニュースの話です、三岡くん。月額は関係ありません」ぷくっ(ふくらみ2回)。

用語2 純資産総額(投信の中身の合計)
投資信託の純資産総額とは、ファンドが持つ株や債券などを時価で合計した金額です。ざっくり言えば、投信の中身の合計です。資産運用業協会の統計では、2026年9月末の公募投資信託全体は361兆1,505億円。前月から3兆1,350億円減り、2カ月ぶりの減少でした(Finasee、2026年10月15日)。
一方、資金流入(売れた額から解約された額を引いたもの)は2兆3,923億円で、16カ月連続の流入超です。入ってくるお金は続いているのに、総額は減りました。
理由は、純資産が「流入」と「値動き」の合計で動くからです。単純な引き算で、流入2.4兆円を除いた分は約5.5兆円のマイナスです。ETFを除く株式投信では、運用成績による資産の減少が約5兆3,000億円と、みんかぶ投信が伝えています(2026年10月16日)。同記事は、9月は主要株式市場の軟調と円高で、運用成績が下がったと説明しています。
「お金が入っても、値段が下がれば総額は減るんですね」と三岡。「うまい話のにおいは、だいたい分かります。だいたい。今回は、においではなく引き算の話です」

用語3 ものさし(何を数えた数字か)
「約3割」という数字も、数え方で変わります。時事通信の数字で、株式等486兆円と投資信託193兆円を足すと679兆円。2,519兆円の約27%です。一方、唐鎌氏の寄稿は、株式・出資金19.3%、円建て投信4.5%、外貨建て投信3.4%、対外証券投資2.1%を足して、約3割(29.3%)としています。含める範囲がちがうので、数字がちがいます。
投信も同じです。9月末の361兆円はETFを含む公募投信全体で、ETFを除く株式投信は209兆975億円でした。同じ月でも、150兆円以上ちがいます。
ニュースの数字は、まず「何を数えたか」「いつの数字か」を確かめます。日本全体の数字は自分の家計とは別物で、現預金の割合が下がったことは、投資をすすめる理由にもなりません。投資信託は元本割れの可能性があります。
お金の置き場所を選ぶときの確認項目は、別の解説記事でも詳しく書かれています。
預貯金・保険・投資など、お金を置く場所を選ぶときのチェック項目を整理した記事です。
参考:お金の置き場所を選ぶチェック項目(預貯金・保険・投資)
投資信託そのものの仕組みは、投資信託と株の違いの回で扱いました。2026年10月26日時点の情報です。最新の情報は、日本銀行や資産運用業協会の公式サイトで確認してください。
小テスト
ある月、投資信託全体への資金流入が続いているのに、純資産総額が減りました。この月に起こりえることはどれでしょう。
- A 統計のまちがいなので、ありえない
- B 保有する資産の値段が下がり、流入を上回って減った
- C お金が入れば、総額は必ず増える
答えはBです。純資産は、流入と値動きの合計で動きます。Cは「必ず」と言い切っているので、まちがいです。
宿題
5分でできます。通帳アプリで、預貯金の合計を見てください。投資をしている人は、その評価額も見ます。預貯金を全体で割ると、自分の「現預金比率」が出ます。数字は、メモするだけです。
校長のひとこと
シーラカンス校長は、お弁当箱の絵が黒板に出た途端、うとうとしていました。
チャイムで、片目が開きます。
「……割合が変わっても、ご飯の味は変わらんのう。まず、自分の弁当箱を見るんじゃ。……ぐう」
金融政策や資金循環などの統計は、日本銀行が公表しています。投資信託の純資産総額などの統計は、投資信託協会が公表しています。価格や家計に関する公的統計は、総務省統計局が公表しています。
出典と確認日
- BUSINESS INSIDER JAPAN(唐鎌大輔氏の寄稿、2026年10月21日)
- NEWSjp(公募投資信託の純資産総額に関する報道)
- 日本銀行「資金循環統計」、資産運用業協会の統計
- 確認日:2026年10月27日
この記事は学習用の情報で、投資の勧誘や助言ではありません。投資の判断はご自身でお願いします。先生や生徒の名前はフィクションで、実在の企業・団体・人物とは関係ありません。
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